海外ローミングで高額請求が届く理由とは?
海外でスマホを使っていると、知らないうちに通信料が膨らむことがあります。その最大の原因は「データローミング」の設定ミスです。データローミングとは、海外の現地キャリアの電波を借りてインターネット通信をする仕組みで、便利な反面、料金が非常に高くなりやすい仕組みになっています。
総務省の2024年度「電気通信サービスに係る内外価格差調査」によると、日本の主要キャリアの海外パケット料金は、定額プランを適用しない場合に1MBあたり数百円に達するケースも確認されており、スマホを「機内モードにしないまま寝た」だけで数千円の通信が発生した事例も報告されています(総務省 電気通信サービス)。
また、GSMA Intelligenceの調査では、旅行者の約40%が海外でのデータ通信費用を事前に把握せずに渡航していると報告されています。つまり「知らなかった」が最大のリスクです。
「スマホを触っていないのに通信している」 — これが高額請求の正体です。アプリの自動更新、iCloudやGoogleドライブのバックグラウンド同期、プッシュ通知の受信など、ユーザーが意識しない通信が積み重なります。
この記事では、出発前に5分で完了できる5つの設定方法を具体的に解説します。あわせて、ドコモ・au・ソフトバンク・ahamoの海外ローミング料金の実態と、より賢い代替手段も紹介します。
日本の主要キャリアの海外ローミング料金はいくら?
海外ローミングの料金は、キャリアとプランによって大きく異なります。2026年7月時点の主要キャリアの料金を整理すると、「定額プランを使えば1日980円〜」という宣伝文句の裏に、いくつかの落とし穴があることがわかります。
| キャリア | プラン名 | 料金 | 対象国数 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| ドコモ | 海外1dayパス | ¥980/日 | 約90か国 | 対象外の国は従量課金 |
| au | 海外データ定額 | ¥980〜¥1,480/日 | 約100か国 | 使わない日も課金される場合あり |
| ソフトバンク | 海外パケットし放題 | 最大¥2,980/日 | 約170か国 | 最大料金が高い |
| ahamo | 海外データ通信 | 無料(20GB、15日間) | 約40か国 | 15日超過後は速度制限 |
| 楽天モバイル | 海外データ | ¥3/MB(2GBまで) | 約30か国 | 2GB超過後は速度制限 |
※2026年7月時点。料金は変動する場合があります。
7日間ハワイ旅行のシミュレーション(ドコモ 海外1dayパス)
- 7日 × ¥980 = ¥6,860
- ただし対象国でない場合は従量課金となり、数万円になるリスクあり
ahamoの「20GB無料」は本当にお得?
ahamoユーザーにとっては確かに魅力的です。ただし注意点が3つあります。
- 15日を超える旅行では速度制限がかかる
- 対象国が約40か国と限られており、東南アジアや中東の一部は対象外
- ahamo契約が必要(他キャリア利用者は使えない)
長期旅行者や、対象外の国へ行く方には、後述するeSIMが現実的な選択肢になります。海外eSIMとローミングの詳しい比較はこちらをご覧ください。
高額請求を防ぐ5つの設定方法(iPhone・Android対応)
この5つの設定を出発前に済ませるだけで、海外での予期せぬ高額請求をほぼ確実に防げます。設定はどれも3分以内で完了するものばかりです。iPhoneとAndroidそれぞれの手順を紹介します。
設定①:データローミングをオフにする(最重要)
最も確実な方法は、データローミングをオフにすることです。これをオフにするだけで、海外キャリアへの接続によるパケット通信が完全に遮断されます。
iPhoneの手順
- 「設定」→「モバイル通信」→「通信のオプション」
- 「データローミング」をオフ
Androidの手順(Google Pixel・Samsung Galaxy共通)
- 「設定」→「ネットワークとインターネット」→「モバイルネットワーク」
- 「ローミング」または「データローミング」をオフ
ポイント: eSIMを使う場合、物理SIM(日本のキャリア回線)のデータローミングはオフにしつつ、eSIM側の回線はオンにする、という設定が可能です。デュアルSIMの活用方法はeSIM設定ガイドで詳しく解説しています。
設定②:Wi-Fi Callingとボイスローミングをオフにする
データローミングをオフにしても、**Wi-Fi Calling(Wi-Fiを使った通話機能)**がオンになっていると、海外のWi-Fiに接続した瞬間に日本の番号経由で通話・SMSが発生し、予想外の料金が発生することがあります。
iPhoneの手順
- 「設定」→「モバイル通信」→「Wi-Fi通話」
- 「このiPhoneでのWi-Fi通話」をオフ
Androidの手順
- 「設定」→「ネットワークとインターネット」→「通話設定」
- 「Wi-Fi通話」をオフ
また、国際通話ローミングも確認しておきましょう。海外で着信するだけでも「着信課金」が発生するキャリアがあります。ドコモ・au・ソフトバンクはいずれも海外着信に料金がかかります(プランによって異なる)。
設定③:アプリの自動更新・バックグラウンド更新をオフにする
「データローミングをオフにしたのに通信料が発生した」という相談の多くは、Wi-Fi接続中のバックグラウンド通信が原因です。ホテルや空港のWi-Fiに接続した瞬間、iOSのアップデートやGoogle Playのアプリ更新が自動で始まり、数GBのデータを消費することがあります。
iPhoneの設定
- 「設定」→「App Store」→「自動ダウンロード」
- 「Appのアップデート」をオフ
- 「モバイルデータ通信を使用」をオフ
- 「設定」→「一般」→「Appのバックグラウンド更新」→「オフ」
Androidの設定
- Google Play→「設定」→「ネットワーク設定」
- 「アプリの自動更新」→「Wi-Fiのみ」または「しない」
- 「設定」→「アプリ」→各アプリ→「バックグラウンドデータ」をオフ
設定④:iCloud・Googleドライブの自動同期を一時停止する
写真や動画の自動バックアップは、Wi-Fi接続中に大量のデータ通信を行います。特に旅行中は写真を大量に撮るため、ホテルのWi-Fiに接続するたびにiCloudやGoogleフォトが同期を開始します。これ自体は問題ないように見えますが、海外Wi-Fiは速度が遅い場合も多く、途中でWi-Fiが切れてモバイル通信に切り替わるリスクがあります。
iPhoneの設定(iCloud)
- 「設定」→「写真」→「モバイルデータ通信」をオフ
- 「設定」→「[自分の名前]」→「iCloud」→「iCloudバックアップ」→「今すぐバックアップ」を手動で実行し、自動バックアップをオフ
Androidの設定(Googleフォト)
- Googleフォト→「設定」→「バックアップ」→「モバイルデータとローミング」をオフ
設定⑤:機内モード+Wi-Fiオンの「節約モード」を活用する
最もシンプルで確実な方法は、機内モードをオンにしてからWi-Fiだけをオンにするという使い方です。これにより、モバイルデータ通信(ローミングを含む)が完全にオフになり、Wi-Fiのみでインターネットが使えます。
手順(iPhone・Android共通)
- コントロールセンターから「機内モード」をオン
- そのままWi-Fiをオン(機内モード中でもWi-Fiは個別にオンにできます)
この設定のデメリットは、電話の着信ができなくなること。LINEやWhatsAppなどのメッセンジャーはWi-Fi経由で使えるので、旅行中の連絡手段としては十分です。
海外旅行前のスマホ設定完全チェックリストもあわせて参考にしてください。
eSIMに切り替えると高額請求リスクはどう変わる?
eSIMを使うと、高額ローミングのリスクを根本から解決できます。eSIMとは、スマートフォンに内蔵された電子SIMで、QRコードを読み込むだけで現地のデータ通信プランを使えるようにする技術です。物理SIMを差し替える必要がなく、出発前に自宅で設定が完了します。
eSIMのメリット(ローミング回避の観点から)
- 料金が明確: 購入したデータ容量を使い切ったら通信停止(予想外の請求なし)
- 日本の番号はそのまま: 物理SIMはそのまま残るため、日本への着信も可能
- 到着直後から使える: 空港でSIMを買うために並ぶ必要なし
- 使い切り型: 月額契約なし、解約手続き不要
eSIMとローミングの料金比較(ハワイ7日間の場合)
| 手段 | 料金目安 | データ量 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ドコモ 海外1dayパス | ¥6,860 | 無制限(速度制限あり) | 対象国のみ |
| ソフトバンク 海外パケットし放題 | 最大¥20,860 | 無制限(速度制限あり) | 高額になりやすい |
| ahamo | ¥0(20GB) | 20GB | 15日以内・対象国のみ |
| タビシム eSIM(例:ハワイ) | ¥数百〜 | プランによる | eSIM対応機種が必要 |
| WiFiレンタル | ¥2,100〜¥10,500 | 大容量 | 受取・返却の手間あり |
※2026年7月時点の参考値。料金は変動します。
eSIMが向いているのは「ahamoを使っていない」「15日以上の旅行」「対象外の国へ行く」「ローミング料金を確実にコントロールしたい」という方です。eSIMとは何か、基本から知りたい方はこちらをご覧ください。
また、eSIM対応スマートフォンかどうかはeSIM対応機種一覧で確認できます。iPhone XS以降、Galaxy S20以降、Google Pixel 3以降など、2020年以降の主要機種はほぼ対応しています。
設定ミスが起きやすいシチュエーションはどれ?
「設定はちゃんとした」と思っていても、特定のシチュエーションで設定がリセットされたり、意図せず通信が発生することがあります。
iOSアップデート後に設定がリセットされる
iPhoneはOSアップデート後に一部の通信設定がリセットされることがあります。特に「データローミング」の設定は、アップデート後に再確認することを強くおすすめします。出発直前にアップデートを行った場合は必ずチェックを。
ホテルのWi-Fiに接続した瞬間の自動同期
ホテルのWi-Fiに接続した瞬間、iCloudやGoogleフォトが大量の写真を同期し始めることがあります。Wi-Fiとはいえ、海外のWi-Fiが途切れた際にモバイル通信に切り替わるリスクがあります。前述の設定④を必ず行っておきましょう。
デュアルSIM端末でのeSIM設定ミス
eSIMと物理SIMを同時に使う場合、どちらの回線でデータ通信を行うかの設定を間違えると、物理SIM(日本キャリア)経由でローミングが発生することがあります。eSIM設定後は「モバイルデータ通信」の回線選択を必ず確認してください。eSIMが繋がらない時の対処法も参考にどうぞ。
乗り継ぎ空港での意図しない接続
乗り継ぎで経由する国でも、スマホが現地キャリアに接続することがあります。たとえば仁川空港(韓国)で乗り継ぐ際に、韓国のキャリアに接続してローミングが発生するケースがあります。乗り継ぎ時間が短くても機内モードにしておくのが安心です。
高額請求が来てしまったらどうする?
万が一、帰国後に高額な請求書が届いた場合も、諦める必要はありません。対処法を知っておきましょう。
キャリアに問い合わせて上限設定を確認する
多くのキャリアでは「海外データ通信の上限設定」サービスを提供しています。請求が届いた場合、まずキャリアのカスタマーサポートに連絡し、明細の詳細と上限設定の有無を確認しましょう。
初めての高額請求は減額交渉できる場合がある
「設定を知らなかった」「初めての海外利用だった」という場合、キャリアによっては一定の減額対応をしてくれることがあります。あくまで交渉ですが、丁寧に事情を説明する価値はあります。
消費者センターへの相談も選択肢のひとつ
明らかに説明不足だと感じる場合は、国民生活センターへの相談も選択肢です。海外通信に関するトラブルの相談実績も多く、対処のアドバイスをもらえます。
出発前の最終チェックリスト
以下の5項目を出発前日に確認してください。所要時間は合計5分以内です。
- データローミング: オフになっているか
- Wi-Fi Calling: オフになっているか
- アプリの自動更新: オフまたはWi-Fiのみに設定されているか
- iCloud/Googleフォトの自動同期: モバイル通信をオフにしているか
- eSIMまたは代替手段: 現地でのデータ通信手段を確保しているか
これだけで、海外での高額請求リスクは大幅に下がります。海外でのスマホ代節約の完全ガイドも参考に、旅行前の準備を万全にしてください。
FAQ
データローミングをオフにすると、海外で電話もできなくなりますか?
データローミングをオフにするのはデータ通信(インターネット)のみです。音声通話は別の設定項目になるため、データローミングをオフにしても通常の音声通話は可能です。ただし、通話ローミング料金は別途かかりますので、LINEやWhatsAppなどのアプリ通話で代替するのがおすすめです。
機内モードにすれば完全に通信費はかかりませんか?
機内モードをオンにすれば、モバイルデータ通信・音声通話・SMSはすべてオフになります。Wi-Fiを個別にオンにすれば、Wi-Fi経由のインターネット通信は可能です。ただし、Wi-Fi通話(Wi-Fi Calling)が有効な場合は、Wi-Fi経由で通話が発生し料金がかかることがあるため、Wi-Fi Callingも事前にオフにしておきましょう。
ahamoの20GB無料は本当に追加料金なしで使えますか?
ahamoの海外データ通信は、対象約40か国において月間20GBまで追加料金なしで使えます。ただし、15日を超えると速度制限がかかります。また、対象国以外では利用できないため、渡航先がahamoの対象国かどうかを事前に確認することが重要です。
eSIMを使うとデータローミングの設定はどうなりますか?
eSIMを使う場合、物理SIM(日本キャリア)のデータローミングはオフにして、eSIM側の回線でデータ通信を行う設定にします。iPhoneであれば「設定」→「モバイル通信」で、どのSIMをデータ通信に使うかを選択できます。この設定を間違えると、物理SIM経由でローミングが発生するため、eSIM設定後に必ず確認しましょう。
海外でスマホを使わなくても通信料はかかりますか?
はい、使わなくても通信料がかかることがあります。アプリのバックグラウンド更新、プッシュ通知の受信、iCloudやGoogleドライブの自動同期などが、ユーザーの操作なしに通信を行うためです。データローミングをオフにするか、機内モードにしておくことで防げます。
海外でLINEを使うには何の設定が必要ですか?
LINEはWi-Fi経由またはモバイルデータ通信(eSIMや海外ローミング)があれば使えます。機内モード+Wi-FiオンでもLINEのメッセージ・通話は利用可能です。ただし、LINEの「着信通知」がバックグラウンドで通信を行うため、Wi-Fi接続時のみ同期する設定にしておくと安心です。
eSIM対応スマートフォンかどうかはどこで確認できますか?
iPhone XS以降(2018年〜)、Galaxy S20以降、Google Pixel 3以降など、2020年以降に発売された主要スマートフォンのほとんどはeSIMに対応しています。お使いの機種が対応しているかどうかは、eSIM対応機種一覧で確認できます。
帰国後に高額請求が来た場合、返金してもらえますか?
完全な返金は難しいケースが多いですが、初めての海外利用や設定の説明が不十分だったと判断される場合、キャリアが一定の減額対応をしてくれることがあります。まずキャリアのカスタマーサポートに連絡し、明細の詳細を確認しましょう。交渉が難しい場合は国民生活センターへの相談も検討してください。






